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江本典隆写真展 “r”

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昭和初期に建てられたというクラシカルなビルの3階。エントランスを入り、古くからの佇まいを感じさせる階段をのぼる。美術関連の洋書があつめられた古書店、そのギャラリースペースで、彼の初の個展は催されている。

雨は、わたしも好きな被写体のひとつだ。雨の日の泣いているみたいな空気が好きなのだ。だけど彼の撮る夜の雨は、ビニール傘越しの街の光が反射してキラキラと美しい。パッと見てクールでかっこいい画面、だけど無数の雨粒の中に映り込んだちいさな反転された世界は、なんだかポップでかわいい。一貫したテーマがあって、だけどいろんな表情がみてとれる、素敵な展示だった。

帰路、雨がぱらぱらと落ちてきた。なんだか楽しい気分になった。

雨が夜の街の光を乱反射しながら路上に降りそそぎ、日常のあらゆるものを洗い流すさまが、とても美しいと思う。

江本典隆写真展 “r”(アール)- 森岡書店

円山応挙展

三井記念美術館で開催中の円山応挙展に行ってきた。ぼんやりしているうちにいつの間にか会期が明日までに迫っていた。

まずは応挙が若い時に描いたという眼鏡絵というものが続けて展示されている。眼鏡絵というのは遠近法で描かれた風景画で、レンズを備えた「のぞき眼鏡」を通して見ると立体的に見えるそうだ。金閣寺や天橋立、清水の舞台など、有名な場所がたくさん描かれていて、当時はこんなんだったんだなという見方でも楽しめた。でもできることなら「のぞき眼鏡」でのぞいてみたかった。

それから襖絵と屏風絵。もうこの展示室はすごい見応え。いきなり波濤図に圧倒される。12幅にわたる水飛沫の描写は見ているだけで気持ちが高揚してくるほどだ。藤花図屏風も見事。捻じ曲がった枝ぶりに、端正な藤の花が美しい。そして雨竹風竹図屏風。雨に濡れる竹と風に揺れる竹の対比。美しすぎる・・・。応挙の描く竹はシンプルなのにすごく存在感があって、好きだ。竹の濃淡で表される奥行き感もたまらない。雪梅図襖は展示替えで見られなかった。これは残念。

淀川両岸図巻の部屋は、もちろんそれもすごいんだけど、それよりもわたしの心を捕らえて離さないのが竹雀図小襖。これすんごいかわいい。てかもうこれ欲しい。竹と雀の襖絵なんだけど、小さい襖なのも雀とよく合ってる。ホントかわいい。小鳥好きのあの人にも見せてあげたいくらいだ。

そして最後に応挙二大最高傑作 ー 松の競演との謳い文句とともに、松に孔雀図襖そして雪松図屏風。雪松図は迫央構図の完成形だとか。描写もさることながら、その空間の使い方は絵画に奥行きと広がりを与える。

まあそんなところで、点数は少なめだけどなかなか見応えのある展示だった。ところで iPhone でメモとってたら怒られる怒られる。iPhone ってそうか携帯電話なのか・・・むぅ・・・。

関重一郎パステル画展

R0011040時折ふと、彼の描く絵のやわらかなタッチを思い出す。そしてブラウザの検索窓にその名前を打ち込んでみる。

関先生は、中学の時の美術の先生だった。直接授業を受けたことはなくて、美術室の掃除の時間に関わっただけ。そんな短い時間でも、たまらなく惹かれるその人柄。佇まいからして超絶な癒しのオーラを放っている、素敵な人だ。

彼の個展が開かれるのを知り、新宿のギャラリー絵夢に向かった。会場に入ると、昔と変わらぬ姿でそこに先生はいた。現在は教員を辞めて個人でパステル画の教室をひらいているそうで、他にも生徒さんらしきお客さんが数人来ている。わたしは数年前にも足を運んでいたのだが、それでもかなり久しぶりなのでもう先生はわたしのことは覚えていないだろうとおもい、声はかけずに展示を見ていた。変わらないやわらかなタッチとやさしくあたたかな色彩は、なんだか安心する。

半分くらい回ったところで、名前を呼ばれた。覚えててくれたのか! と、内心かなり驚喜した。まあ芳名帳に名前を書いていたので、それをみて思い出してくれたのかもしれないけど、それでも嬉しい。しばし話し込む。「俺は四中が本当に好きだった。四中から離れたら、教師は続けられなかった」と仰っていたのが印象的だった。そして先生はまた別のお客さんのところへ。わたしはふたたび展示を見て回る。

しばらくすると、先生は画板を持ってやってきた。生徒さんらしき若いご夫婦がいて、奥さんのほうは赤ちゃんを抱いている。どうやらこれから赤ちゃんの絵を描くようだ。これはいいところに居合わせた。淡いパステルの色を重ね合わせて、赤ちゃんのやわらかな肌や髪の毛の質感が紙に落とされていく。モデルをとらえる目はまっすぐで、紙の上を行き来する手の動きに迷いはない。絵を描く姿は美しい。

なかなかじっとしてくれない赤ちゃんに苦戦しつつ、ものの十数分で描き上げた。先生の絵は風景画が圧倒的に多いけど、そういえば中学のときも生徒をつかまえて人物画を描いていたっけ。美術準備室におかれた描きかけの誰かの絵を見ては、わたしも描いてほしいなぁと密かにおもったものだ。もちろん美術室の掃除当番で話すだけだったわたしは、そんなお願いをすることはできなかったけど。

いいもん見たなぁ、とおもいつつ、退散する前にもういちど先生に挨拶。「稼ぎがよくなったら先生の絵を買いたいです」って言ったら、「稼ぎがよくなったらでいいからな。こんどお前も描いてやるから」と。すごい嬉しかった。ほんとに描いてもらえるかはわからないけど、いつか描いてもらえたらいいなぁ。できることなら、わたしがシワシワのバアサンになる前に。

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ドガ展

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横浜美術館で開催中のドガ展を観てきた。国内では21年ぶりとなる回顧展らしい。

まずは自画像から。ドガ、なんか、ショパンに似てね・・・? 気のせいかな(笑)。ドガの祖父の肖像がよかった。光とタッチがやわらかくてきれいなんだけど、厳格だったというじいさんの雰囲気がすごくよく表れてて。ソファの肘掛けにかけた手がいい。手フェチ的にたまらん手だ。いい手だ。チェロ奏者の肖像は、前景のチェロケース越しの横顔というちょっと変わった構図が印象的。

そしてドガといえばこれでしょう、踊り子。エトワールは初来日だそうだ。ふわふわしたチュチュの描写はすごく繊細できれい。ライトをあびて、ちょっと幻想的。舞台袖の怪しげな男が不思議な雰囲気を醸し出していた。エトワールの他にも、稽古の様子とか控え室の様子を描いた作品がたくさん。バレエってほんとにきれいで、ドガが描きたがるのよくわかるなぁっておもった。ところで控室の踊り子たち、寝かせたコントラバスに足かけてバレエシューズの紐結ぶのはどうかと(笑)。でもこのコンバス、男性の気配を感じさせるモチーフとして描かれているらしいんだけど、それはナニかい、ドSってことかい?w

ドガは早くから写真にも興味をもち、発売されて間もない小型カメラで写真を撮影し、絵画の制作の参考にしたそうだ。絵画のためのものとはいえ、どれもすごく雰囲気があって印象的な写真。身体を拭く裸婦の写真なんかは、女性の身体と布地のやわらかな線と、ダークな背景のコントラストがすごいよかった。

彫刻は踊る人の活き活きしたかんじがよくでていた。スパニッシュダンスかっこいい。アトリエに残されていたパレットなんかも展示されていた。胸が熱くなるな。

APEC 騒ぎですごいことになっている横浜だったけど、美術館そのものはおもったほど混雑もしておらず、ほどほどなかんじでよかった。会期は12/31まで。

陰影礼賛

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国立新美術館で開催中の陰影礼賛展に行ってきた。「かげ」をテーマに、絵画や写真、インスタレーションなど、幅広い時代と分野の作品を集めた展示。

展示を見始めてまず、陰影がテーマっていったって、絵画や写真において陰影のないものなんかないんじゃないかい、とかちょっとおもったんだけど、たしかに陰影が印象的なものが集められていた。なんとなく、写真作品のほうが絵画よりもより「陰影」を感じるものが多かったようにおもう。たぶん、絵画だと作家の意図でいくらでも制御できるからなのかなぁ、とかおもったり。写真だと、そこにある影をどう写し込むかになってくるから、より際立つのかな、とか。特に今回のようなテーマに沿って集められた作品ならなおさらに。モノクロ写真が多かったってのもあるかもしれないけど。写真のところの説明文に「写真のなかに写り込んでいるすべての事象のなかで、影や陰こそが、過去に存在していたという感覚をもっとも強く生じさせるものかもしれません。」との一節があって、たしかにそのとおりかもとおもった。

普通の展覧会にくらべて作品の幅がすごい広いのでおもしろかった。ところどころで平山郁夫、東山魁夷、徳岡神泉、横山大観といった日本画の大家の作品に不意打ちをくらったり、杉本博司やアンディ・ウォーホルとかも突如あったりして、ちょっと嬉しい。高松次郎という人の「影」という作品は、まさに「影」そのものを描いた作品で、あれ? これほんものの影? みたいなかんじでおもしろかった。

1Fの展示室ではゴッホ展がやっていたりして人がごった返していたけど、こちらは空いていてゆっくり楽しめた。

DESIGN ふたつの時代

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招待券をいただいて、今日ちょうど銀座で用事があったので、ミキモトホールで開催されている DESIGN ふたつの時代 [60s vs 00s] に行ってきた。テーマは「戦後日本のデザインはどのように成立し、どこへと向かうのか?」だそうで、日本デザイン史の成長期・変革期に相当する1960年代・2000年代に絞って再考するというもの。ティスプレイ、グラフィック、クラフト、インテリア、インダストリアル、ジュエリー、パッケージ、サインといった各分野のデザインが60年代と00年代で対比するかたちで見られる。車なんかは60年代と本当に変わってるけど、キッコーマンのしょうゆの瓶なんか、1961年にデザインされたものがそのまんま現役だったりするからすごい。展示の数もっと多くてもいいのに、とおもったけど、場所的にしかたないのかな。

シャガール展

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藝大美術館で開催中のシャガール展に行ってきた。ポンピドゥー・センターが所蔵する作品を集めている。シャガールってフランスのイメージ強いけど、ロシア生まれのユダヤ人なんだね。ロシア美術史と関連づけた展示になってる。

シャガールっつーとまぁ、アレだわな、動物お空飛んじゃってる系だわな。なんだけど、初期のほうなんかはゴーギャンみたいなタッチの風景画があったり、ゴッホみたいな室内の風景があったりでおもしろい。同時代の作家の作品もあって、カンディンスキーの一連の作品がよかったなぁ。あとプーニーの「コンポジション」シリーズ。ああいうの好き。立体のやつがおもしろかった。

個人的にいちばんテンション上がったのが、オペラ「魔笛」の舞台美術。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のこけら落としの公演、これの舞台美術をシャガールが手がけていたのね。この舞台衣装や舞台の背景画なんかのスケッチが展示されてるんだけど、かなり見応えたっぷり。すごいおもしろい。てかこんなスケッチからよく衣装作れるなみたいな(笑)。いやでもホントすごい。じっさいの舞台の写真が展示されてるんだけど、もうね、スゴすぎてわけわかんない(笑)。夜の女王が、パパゲーノが、パミーナが、背景から衣装から何から何までシャガールなのよ。スゴすぎて笑えるもの。あーおもしろかった。

世界報道写真展

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今日は所用で目黒へ。ちょっと時間をつぶす必要があったので、写美に足を伸ばして会期が明日までに迫った 世界報道写真展 2010 を観て来た。

会場入ってすぐに、目を背けたくなるような凄惨な光景がつづく。スポーツとか自然をテーマにしてる写真なんかはところどころホッとするものもあったけど、報道写真という性質上ものものあるだろうけど、どうしても世の中の負の部分がクローズアップされる。おなじ地球上で起こっていることを目の当たりにして、だけど自分がどうすることもできないから、ただただ撃たれる心配なく生活できる幸せを思わずにいられなかった。ああわたし日本でよかった、って、それで済ませられるものではないんだけど。写真のもつ伝える力みたいなものも強く感じた。

民家の天井に砲弾で穴があいて、そこから光の差し込むリビングの写真が不思議と美しくて、すごく印象に残った。

マネとモダン・パリ

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三菱一号館美術館で開催中のマネとモダン・パリ展に行ってきた。

4月にオープンした三菱一号館美術館は、1894年に建設された三菱一号館を復元して同じ地に建てられた建物。古い洋風なつくりが素敵なたてものだった。美術館としてはひとつひとつの部屋がすこし手狭なかんじもしたけど、雰囲気はとてもいい。

展示は、とりあえずベルト・モリゾの肖像は素敵だった。黒がとても深くてきれい。あとドガのでオペラ座のバレエの稽古の風景の作品がちょっとお気に入り。チュチュのふわふわした質感の描写をじっさいに見られるのがうれしい。ニャンコシリーズもかわいかった。「日本趣味」というくくりになっていて、まあ印象派のジャポニズムなんだけど、あれ日本なのか・・・よくわからん。でもゾラの肖像画の背景にある浮世絵と屏風はまさにジャポニズムで、なんだかうれしくなる。ニヤリ。

おもしろいのが、「死せる闘牛士」。これはもともとはもっと大きな絵画の一部だったんだけど、サロンであからさまなスペイン趣味やらおかしな遠近法だとかをひどく批判されて、マネが自分で半分に切断したらしい。熱いねえ。その上部は「闘牛のエピソード」として NY フリック・コレクションに所蔵されてるんだとか。

あとは図面もの。あれは図面なのか? 図面・・・ていうかなんかスゴい。あの緻密さ。いまわたし CAD で図面引いてるけど、あれを手書きで・・・ウヒー。昔手で図面引くとき、「線は細く、鋭く!」って言われたもんだよーって会社の人が言ってたけど、まさにそんな線。髪の毛よりも細く、鋭い線。いやぁ、参りました。お気に入りは「1855年万国博覧会の産業館(横断面図)」。心の fav★ ボタン、押しました。

さて今日1日 iPhone もって外出して、いやぁ楽しいねぇ。丸の内から歩いて家帰ったんだけど、しょっちゅう歩いてる道なのに無駄に地図みてみたりしてね(笑)。うーん、これは知らない土地にいきたいぞ。あーあーツーリングいきたいなぁ。明日も微妙な天気だなぁ。梅雨とかはやく終わればいいのに。

会田誠+天明屋尚+山口晃

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昨日の夕方アップルストアで iPhone を受け取った後、本来ならばくもとも協定満了の祝杯をあげるはずだったのだがそれができず、なんだかそのまま家に帰るのもさみしくて、ひとり銀座をウロウロしていた。それでふと思い出し、高橋コレクション日比谷で開催中の「会田誠+天明屋尚+山口晃」展に行ってきた。

会田誠「ジューサーミキサー」は、数年前に上野の森美術館でも見たんだけど、会場のせいなのかな、より迫力だった。まあエログロなんだけど、会田誠曰く「中学生の頃から抱いていたイメージ」だそうで、ああでもなんか中学生の頃ってそーゆうの考えたりするかも、って、なんか妙に納得した。だからフェミニストから苦情がきても答えられないそうですw ウケるw この人の作品て、それがそれだけに受け付けない人もいるとはおもうんだけど、作者の意図を理解するヒントになるテキストも一緒にくれたので、いろいろ考えつつじっくり見ることができて楽しかった。

天明屋尚はまたちょっと趣が違うんだけど、この 3人という組み合わせは絶妙なバランスかと。「漢字紅葉図具羅富異帝杉戸絵 大和魂一匹狼」「漢字燕子花図具羅富異帝杉戸絵 一撃必殺特攻隊」はテキストをデザインした襖絵。なかなかかっこいい。しかも琳派風(笑)。木の質感もいいかんじ。ウルトラマンの模様が刺青で表現されてる刺青マンとかおもしろかった。

山口晃の描く世界はやはり楽しい。そしてあの描写力にはホント脱帽。これは実物を見てこそだよねぇ。前に見たときはそこまで気に留めなかったんだけど、今みるとあの上半身が馬で下半身がバイクになってる乗り物が・・・なんかすごく目を引いてですね・・・まじまじと見てしまった。それが朽ち果てて、馬の部分が化石になってたりして横たわってるの見るとなんか切なくなったり(笑)。やけに馬バイクに感情移入しながらあの世界を見たw

広めのギャラリーに、客はなんとわたしひとり。なんて贅沢! ギャラリーだからそこまで点数は多くなくてもっと観たいっておもうけど、これで 300円は素敵。これくらいの価格設定なら気軽に見られていいなとおもった。