カテゴリー別アーカイブ: 読書

蝸牛考

蝸牛考 (岩波文庫 青 138-7)同僚とも以下略男と話していてこの本の話になり買ったところの柳田邦男「蝸牛考」。蝸牛を表わす方言は、京都を中心としてデデムシ → マイマイ → カタツムリ → ツブリ → ナメクジのように日本列島を同心円状に分布する。それはこの語が歴史的に同心円の外側から内側にむかって順次変化してきたからだ、と柳田国男は推定した。すなわちわが国の言語地理学研究に一時期を画した方言周圏論の提唱である(解説より)。こんな解説みて、読まずにおれませんて。

今となっては方言周圏論だけで説明することはできないんだろうけど、方言がどのように広がっていったのか、そのひとつの説としてとても興味深い。わたしは「かたつむり」で育ったクチだけど、本当にものすごい量の方言がある。また、その派生に児童が大きく影響しているというのも面白いなぁとおもった。

めす豚ものがたり

めす豚ものがたりたしか堀江敏幸の書評集に載っていて、すげータイトルだなオイとかおもって買って積んでおいたものとおもわれる、マリー・ダリュセック「めす豚ものがたり」。若くてセクシーで魅力的な女性がメス豚に変身してしまう、という話。変身といえばカフカのそれがまず浮かぶわけで、あちらは朝起きたら虫になってたんだけど、こちらはだんだん豚へと変貌を遂げていくその過程と、人間と豚との行き来が描かれている。

なんていうか、だんだんブタになっていくとか、自分に重ねちゃってね・・・。あ、お前は若くてセクシーで魅力的な女性じゃねーだろってツッコミはいりませんよ。ええいりませんとも。わかってますから。ええ。でその描写がやけにリアルに感じられて、グロテスクなんだけどなんか他人事とおもえなくてガクブル。なんとも妙な体験であった。だんだんブタに・・・ああ。。。

こつの科学

「こつ」の科学 ― 調理の疑問に答える冷める時に味がしみるとか、ナスは油通しするとか、黒豆煮る時は鉄釘入れるとか、天ぷらの衣は混ぜすぎないようにするとかって、理屈がわかっててするのとそうでないのとではかなり違う気がする。料理は科学だなぁ、もっと知りたいなぁ、とおもって、「料理の科学」を読んでみたんだけど、これ著者がアメリカ人なので日本料理のことが全く書かれていなくて物足りない。というわけでもう1冊、杉田浩一「こつの科学 ― 調理の疑問に答える 」である。

いつも何気なくやっている手順が、科学的にどのような変化をすることでそうなるのか、というのがよくわかって、終始「へーへーへーーー」と言いながら読んでた。知らなかった新たなこつも得ることができて、大満足の1冊であった。

漂流

漂流先月からの流れで個人的に吉村昭祭りになっていた。その中から1冊、「漂流」。江戸時代、嵐で難破し黒潮に流され無人島に漂着した土佐の船乗り長平の、史実をもとにした小説。

長平を乗せた船が漂着したのは、伊豆諸島最南端に位置する鳥島だった。水も湧かず、植物もまともに育たない無人の島で、仲間は一人また一人と倒れていく。そのような極限状態にあって、この長平の生き様が胸を打つ。無人島にたった一人取り残されて、まともな精神状態でいられるだろうか。ただ生きていることに感謝して、念仏を唱えて。すごいわ。。また、生活の手段。限られた資源からいろいろなものを作り出したりして生活していくわけだけど、それが可能なのもこの時代だからこそ。現代人がこの状況に陥ったら、あっけなく餓死していることだとおもう。

この小説において、あほう鳥はかなりの存在感である。貴重な食糧であると同時に、渡り鳥であるあほう鳥の動きと一緒に季節が移ろいでいく。その淡々とした時間の流れが切ない。なんだかあほう鳥にやけに親しみがわいてしまった。 そして、バランスのとれた食事と適度な運動というのは、今も昔も、都市生活でも無人島生活でも同じなんだなぁとしみじみ。食べること、そして生きることを改めて考えさせられた。

冷い夏、熱い夏

冷い夏、熱い夏6月くらいに予備知識なしで数ページ読んで、あ、これは8月に読もう。と決めて積んでおいた吉村昭「冷い夏、熱い夏」。末期の肺癌に侵された弟の闘病、そして死に至る過程を、兄である「私」が見つめた記録。長編小説とあるけど、ノンフィクションに近いのかな?

この本が上梓されたのは30年近く前で、当時は癌告知=死の宣告であり、患者には告知しないのが一般的だった。筆者も、弟には頑なに病名を隠し通している。だけど、日に日に衰えていく中で、本人がわからないわけないんじゃないか・・・とおもう。それで疑心暗鬼になって、家族との関係がおかしくなるのも嫌だし。父上は自分が癌だって知っていたし、当時と現在を比べると医療は格段に進歩しているわけで、本人の性格とかいろいろ違うこともあるんだけど、でも、死に至るまでのその描写がすごく緻密でリアルで、読んでいてとにかく父上とかぶってしかたなかった。だけどあれからちょうど1年経った今この本を読んでいるのは、何か意味がある気がしてならない。生きることと死ぬことを考えに考えていた1年前。そのことを思い出すきっかけになった。

しかしこのタイトルがまた絶妙だな。本当に冷たく、そして熱い夏だった。

卵子老化の真実

卵子老化の真実ガクブルしながら手に取った、河合蘭「卵子老化の真実」。わたしは現在 30歳である。焦る必要はない・・・と言い聞かせているけど、でも決して悠長にはしていられない年齢だとおもう。子供を産むには。

この本を読むとまさにそのとおりで、30代後半以降の妊娠出産が当たり前になったとはいえ、35歳の妊娠力は20代の半分に低下し、「卵子の老化」は染色体異常、流産など様々なリスクを増加させてしまう。ヒトの生理は変えられないのだ。じゃあ早く産みましょうと言っても、いろんな要因でなかなかそうもいかないのが現代社会。わたしの周りにも30代後半や40歳を超えて初めての出産をした人はいるし、いろんな人がいるのは当たり前。考えさせられることは多いけど、でも、とりあえずわたしは・・・なるべく早く産みたいなぁ。。とおもってる。けど、どうなるやら。。

ヨーロッパとイスラーム

ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か知人の tweet より、内藤正典「ヨーロッパとイスラーム ― 共生は可能か」。トルコに行ってイスラム圏の文化に触れてきたところだったので、興味が湧いて読んでみた。

第二次大戦後、復興に必要な労働力としてヨーロッパに移住したムスリムは、現在二世、三世を含め1500万人にのぼると言われている。そのようなムスリム移民たちが、今のヨーロッパ社会でどのように生活しているのかがよくわかる。世俗分離のキリスト教と、それが不可分なイスラーム。受け入れ国であるドイツ・オランダ・フランス、それぞれの社会における現状の軋轢を分析しつつ共生の可能性を探る。公教育の場でのスカーフ着用問題とか、そんなんどうでもいいじゃん! とかおもうんだけど、それっておもいっきり無宗教な日本人的感覚なんだろうなぁ。日本では宗教的な背景は薄いにしても、同じように移民による犯罪だとか治安の悪化だとかという問題があるわけで、たいへん興味深く勉強になった。

食べる西洋美術史

食べる西洋美術史わたしは食べるという行為にものすごく執着がある。道を歩いていて、人が何かを食べながら歩いているのを見ると、何を食べているのかすごく気になってじっと凝視してしまう。食べ物の写真を見るのも大好きで、RSS リーダの中のごはん系ブログの数は50近くにのぼる。そして、絵画。食事あるいは食物の美術表現の歴史を考察するだなんて、なんておもしろそうな本! というわけで即買いしたところの、宮下規久朗「食べる西洋美術史 最後の晩餐から読む」である。

「最後の晩餐」からはじまって、時代と絵画の変遷をたどりながら寓意や象徴への基礎的な知識を得ることができる。西洋絵画というのはキリスト教と密接な関係があるけれど、食べるという行為もかなり宗教的意味が強いということを知った。また、食糧供給が安定していない時代は絵画の中の豊富な食材はひとつの理想だったとか、いまわたしがごはんブログ毎日いっぱい見ておいしそおおおおーーーとかやってるのとおんなじだなぁとw おいしいことは幸せだから、おいしそうなことも幸せなことなのだ。いつの時代も。笑

掲載されている絵は実物を見てみたいものがいっぱい。
この本を元にした展覧会とかやってほしいわー。

太陽と毒ぐも

太陽と毒ぐもよそのブログ経由。角田光代「太陽と毒ぐも」。おかしな癖のあるパートナーとの生活を描いた短編集。風呂に入らない、物を買い漁る、万引き癖、記念日フェチ、迷信フェチ、などなど。夫婦よりも同棲中の恋人同士というのが多い。

ここまで極端ではないにしろ、一緒に暮らしてみてはじめて気づく似たようなことってけっこうある。わたしは何事もすごい大雑把っていうかまあ早い話がガサツで、ころすけはわりと細かい。このギャップ、ストレスになるかなーとおもったけど、意外とバランス取れてる。今のとこは。先日なんかは、食べるものに対する熱意の温度差(もちろん、わたしの方が食に対する執着心が圧倒的に強い)で、喧嘩というわけじゃないけどわたしがちょっと落ち込んだりしてた。まあそれについては話をして、お互い理解して納得したのでいいんだけど(最近ちゃんと気遣ってくれてるしね)、でもなんかそういうちょっとしたことの歪みが積み重なって、大きな溝になってしまう関係もあるんだろうなぁとおもうなどした。

そんなこともあって、なんか面白く読んだ。人と一緒に暮らすって、譲歩の賜物なんだよな。当たり前だけど、相手を思いやること、相手の立場に立って考えることを忘れないようにしたい。

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