ポール・オースターの小説に、街に出て見知らぬ人のあとをついてって写真を撮る、みたいなことをするエピソードがある。
何ら意識的な動機もなく、彼女は街なかで、知らない人のあとをつけるようになった。朝、家を出たところで無作為に誰かを選び、その選択で一日の行き場が決まるのだ。(中略)まもなく、カメラを持っていって、つけている人々の写真を撮るようになった。– リヴァイアサン
いつかわたしもその遊びをやってみようとおもっていたんだけど、なかなか実行する機会がなかった。そして今日。特に予定がない・天気がいい・寒すぎてツーリングには向かない、ということで、その機会を得た。
家を出て、しばらくは人がいない。とりあえず秋葉原へむかって歩き出す。途中、細身のジーンズにブーツの女性を見つけ、よし、この人でいこう、と決めて後をつける。なかなかいいペースで歩くな、とおもっていたら、あっさり秋葉原駅の改札に消えていってしまった。うーん、電車に乗ってもいいんだけど、まだその勇気が出ない。ということで、次。
次は黒いコートの女性。なにやら両手に大きな荷物をもっている。しばらく後をつける。ヨドバシのフロア案内をみたり、ドーナツ屋のドーナツに惹かれてみたりしている。そして向かった先は、韓国料理店。ぬう。ごはんはさっき食べたばっかりだ・・・。またしても断念。
なかなか難しいな、この遊びは。ということであきらめて神田へ。スキーウェアを新調したいのだ。とりあえず見るだけのつもりが、ついウッとなってパッと買ってしまいそうになったけど、来月友人の結婚式があることを思い出し、思いとどまった。神田界隈は何かのイベントをやっていて、あちこちに雪像があったり、万座温泉から足湯がきていたりと盛り上がっていた。すいとんが100円で振る舞われていて、ついつい買い食い。寒空の下歩き回って冷えきった身体にしみわたる。
さてとりあえず目的は達したので、またさっきのつづきをしてみようか。ということで、今度は青いダウンジャケットの女性。しばらく歩くと、三省堂書店へ。ここは迷わず後を追う。まずはファッション雑誌を立ち読み。そしてベストセラーのコーナーや新刊をチェック。いろんなジャンルをみて回っている。わたしも適当に立ち読みしつつ、様子をうかがう。2Fへ移動。はっ。見失った・・・! しばらく探したものの、見つからない。うーむ、やっぱり難しいなぁ。
しかたないので、あきらめて自分で道を選んで歩くことにした。センター試験がおこなわれているであろう東京大学の横を通り過ぎ、たどり着いたのは根津。根津のたい焼きを食べたくなったのだ。時間的にもう売り切れてるかも、とおもったけど、無事にありつくことができた。うん、ウマい。シアワセ。
というわけでなんとも中途半端に終わってしまったオースターの遊び。今度は「電車乗ってもついていく!」と心に決めてから挑みたい。お店に入られてもいいように、胃袋と財布に余裕をもたせて。