新しい本は、しおりのひもが紙に「し」の字を描いてくっついている。それをはがすのが好きだ。
その「し」をくずすのはもったいないような気がしつつ、はがす。ぺりぺり、とも、みしみし、ともつかない感触が指の先をつたう。そしてはがしたあとのページには、「し」の跡ががのこされている。それを見るにつけ、なんだかむずがゆいような、もどかしいような、だけど妙な愛着に似た感情をおぼえる。
そしてなんとはなしに指の腹でその「し」をなぞってみる。とても不思議な感覚である。ちょっとだけエロい気がする。でもたぶんそれは気のせい。