フジ子ヘミングというピアニストがいる。普段クラシックを聴かない人でもその名前ぐらいは知っているであろう、超売れっ子のピアニスト。しかし私はどうも彼女の演奏を好きになることができずにいた。ドラマになるような話題性だけが先走ってるような印象をなんとなく最初に持ってしまったためかもしれない。彼女の数奇な運命に同情しつつもなんだかその話題性を助長するためのもののように捉えてしまう。まあ、単なるひねくれ者なのかもしれないが。それを抜きにしても、実際、テクニック的にそこまでではないというのは私でもわかる。その彼女がなぜあんなにもたくさんの人を惹きつけるのか。
昨日の夜、テレビのおいてある部屋でぼんやり本を読んでいたら2階からバタバタと父親がおりてきてテレビをつけた。なんだなんだと思ったら、フジ子ヘミングの演奏会の放送だった。一目見てわかるその人をみて私が「フジ子ヘミングか」とつぶやくと父は「なんだ、知ってるのか」という。当たり前だ。父は自分の部屋のテレビの写りが悪いので下におりてきたようだ。普段クラシックを聴かないわけでもないが、そこまで積極的に聴く姿勢をとる父は珍しい。
正直、彼女の人気はその話題性によるもので、ドラマなどの影響もあって一時的なものなんじゃないかとすら思っていた。しかし今でも、彼女の演奏会のチケットは手に入りにくく、CDもクラシックとしてはほかにないほど売れているらしい。なんでなんだ?なんでこうも人をひきつけるんだ?私もなぜか読んでいた本をおいて彼女の演奏を聴いていた。
今まで何度かCDなりTVなりで聞いてきたフジ子ヘミングその人の演奏。音楽。何度聴いてもそのテクニック的な緩さというのは拭えない。さらに言ってしまえば、彼女の演奏を聴いていると、ちょっと「ケッ」という感じがする。なのに、聴くたびになんだか言葉にしがたいいろんなことを感じる。きっと、それが彼女の魅力なんだとおもった。人生経験からくる味というのはいろんなアーティストから感じることができるが、彼女の場合もその人生そのものが音楽からあふれて、人を惹きつけてやまないんだろう。「ケッ」と思いつつ、やっぱりどこかすごいと思わせる、何か。技術だけでない芸術性。
Charlie Parkerが、「音楽とは、君自身の経験であり、思想であり、知恵なのだ。もし誠の生活を送らなければ、君の楽器は真実の響きをもたないであろう」と言っている。フジ子ヘミングのそれはまさに、「真実の響き」なんだろう。
好き嫌いはともかく、彼女が人を惹きつけるそのわけが、少し見えた気がした。
うちでもとてもよく似た状況が。
寝る前に父が「フジコヘミングやってたから録画したよ」と。普段クラシックを聴くような人間ではないおれは「ふーん」とだけ返事してまだ見てない。演奏は一度テレビで見かけたが、好きな類いのものではないと思った。
何なんでしょうねぇ。
今度見てみるか。
うん、なんかすげーなこのオバサン
って思うけど
好きかといわれると…
好きな類ではないんです。
でも何か響くものはあるんでしょうねい
私のピアノやってる友達が「ぶっちゃけ、下手だと思う」とかゆっていて。。。私はよくわからなかったのですが。。。でもきっと響くものがあるのでしょうね。そうでなければ話題性だけではここまでにはならないはずですもんね。それが「なにか」確かめたくって、また聴いてしまう。とかもあるかもですね〜
私も今度真剣に聞いてみようっと。^^
うん、ぶっちゃけ、うん…笑
やっぱあれでしょね、フジ子さんの壮絶な人生を演奏に重ねて聴いてる部分があるんだとおもいます。多くの人の心を打つのはわかる気がしますが、私個人としてはなんかどうも素直に受け付けられないんですよね。。。はは。でもやっぱなんかすごいなーっておもいます。
皆さんが仰るとおり、テクニックが優れている人は他にいっぱいいますねー。しかし、聞いてみると、他の人とは違う柔らかさや響き、優しさがあるように思えます。その個性が普段あんまりクラシックを聞かない人も受け入れやすいのかなーって。
特にオケは「なんだかなー」って思う演奏も多いですが、リストのラ・カンパネラやため息、愛の夢、葬送行進曲、ショパンの木枯らし、なんかは好きです。カンパネラをあれだけ響かせるのはすごいなーって。
TBありがとうございました。
好き嫌いは人の好みですから、とやかく言うのは野暮でしょう。フジ子ヘミングはそうバリバリ弾くテクニックを持っていないだけに、話題性だけでもてはやされているだけだと誤解しやすいのでしょう。私もそうでした。偏らない心で彼女の演奏を聞くと色んなものが聞こえてくるのですが、なかなかそうはいかないみたいですね。
これからもどうぞよろしくお願いします。
>ダイチさん
そう、テクニックじゃない、なんか柔らかさとか響きとか優しさとか。そういうのがたくさんの人の心に響くんでしょうねーきっと。ピアニストの人ってけっこう手がゴツイ人多い気がするけど、フジ子さんもあのゴツゴツした手からあんな柔らかい音を出すんだもんなあ。とか思っちゃったりします。
>Schweizer_Musikさん
わわ、お越し下さいましてありがとうございます。しかもこんな拙いブログにコメントありがとうございます。
偏らない心。あーーーーそれ、私に必要なものかもしれません。
私、彼女のピアノのファンです。
彼女のピアノを聴いてると彼女の人生とかじゃなくて、自分の人生(ってそんなに長く生きてないけど(汗))を走馬灯のようにというのかなあ、思い出してきて、気付いたら涙が出てくるんですよね。なぜだか未だに分かりません。こんなピアノ初めてでした。
彼女のピアノを聴いたおかげで、私はピアノの練習をはじめました。なんだか無性に自分でも弾きたくなったんですよね。ホントに不思議です。貧乏性の私にピアノまで買わせちゃったんですから(笑)。
フジ子さんの手は見た目はゴツゴツしてるけど、柔らかかったですよ。
おお、そういう感じ方もあるんですね。やっぱそういう何か響くものがあるんでしょうね。
スミゴルフさんがピアノの練習いつもがんばってらっしゃるの見てるので、一人の人間をそこまでこう、ピアノに駆り立てるというか、そんな力をもつ演奏ってやっぱすごいなっておもいます。
私はフジ子については、全くわからない一人です。なぜそんなに人気があるのだろう。うちの嫁がフジ子の演奏が好きらしく、なぜ好きなのかと聞くと「なんとなく」らしい。私は本当にどこが受けているのか全然わからない。
当然、音楽を聴くということは、その演奏家がどんな人生を生きてきたなんて関係ないから、フジ子がどんな人生を歩んできたということについては私は全く興味がない。どうも、私がフジ子の演奏に共感を持ち得ないのは、その一点ではないかと思ってきています。
少しでも感動している人の感覚を理解したくて、純粋に彼女の演奏に感動したという人を探して、さまよっているのですが、探しても探しても、「彼女の人生」がキーワードになっている。その時点であぁ音楽を聴いているわけではないのだなとあきらめてしまっています。あきらめること自体が、私の先入観が強すぎるのだろうかと常に自問自答しています。
世界の巨匠の人生や生活に関して、私はほとんど知りません。フジ子の境遇・生活だけが情報の洪水となって押し寄せ、なぜか「なぜあなたはあの演奏が理解できないのか」というプレッシャーとなります。いったいどうなっているのでしょうか…
>denさん
コメントありがとうございます。
私も彼女の演奏はわからない、というか、好きな類いではないんです。ただ、好きではないにもかかわらずどこかすごいとおもうのは、やはり彼女の人生を演奏に重ねてるからなんだと思います。おそらく、多くの人がそういうふうに彼女の演奏を聴いてるんじゃないかなとおもいます。それがつまり「純粋に音楽を聴いている」ということにならないといえば、そうなのかもしれません。確かに、フジコヘミング以外の演奏家で、その人がどんな人生を歩んで来たかなんて知らなくても演奏に共感する人はたくさんいます。というか、ほとんどがそうです。その演奏家の生きて来た人生は、その音楽に影響を与えるものと思いますが、そんなの知らなくても音楽に何かを感じられる部分はあると思います。フジ子さんの場合、それが前面に出てるというか、音楽より先に情報として入ってきているからわかりやすく、普段クラシックを聴かない人を含め、多くの人が感銘を受けたりするのかもしれません。音楽を聴いてるわけではないと言ってしまえばそれまでなのですが。
わからないでいいんじゃないでしょうか。音楽の聴き方なんて人それぞれだし、それをどう感じるかも人それぞれだし。プレッシャーなんて感じる必要全然ないとおもいます。音楽は考えるものではなく聴くものですから。
私はやはりテレビでフジコヘミング現象が起きた時に普段クラッシックピアノ演奏会に行かない様な方からすごい良かったって聴いていたのです。しかしその10年ぐらい経ってまだ彼女は高齢で元気に演奏活動をしているのかと知りました。実際にフジコさんの曲を聴いてみたのです。またクラッシック好きならば一般的に天才的なピアニストの曲は誰もが聴いたことはあるはずです。芸術は深いですが、例えば綺麗にお手本のような絵画と、少し趣のある絵画、どちらが毎日の観ていて飽きないかって、また愛着が湧くのかでしょうか。
フジコさんの音色は優しく癒されます。心が豊かになるのです。彼女に実際に接した事があるから分かるような気がしますが、とても優しくてはにかみ屋さんでおしゃれで何時迄も少女の様な女性に感じました。ピアノが上手に弾ける人は今や小中学生でも大人顔負けのピアニストがいますし、ミスを不安に思っているピアニストはまだまだ未熟ではないでしょうか。視聴者ねやミス探しはその方の粗探しの様な気もします。またあれだけのご高齢でもチケットが高値でも今でも完売するぐらいのピアニストですので、彼女をよく言わない人々は皆ジェラシーなんですよ。
高値が付いているのも彼女自身が今更かなりのご高齢です87歳ぐらいですし、それ程お金はが必要でしょうか?
高値を付けても集客できるピアニストなので、彼女で美味しい思いをしているのはその周りの仕事の関係者だと思います。
実は、私も彼女のCDで友人が貸してくれて聴きました。全く唖然として、黙ってお返ししました。何とも言い様がない、と言うのが正直な気持ちでした。このような人を持ち上げるマスコミはえたいが知れません。