父上は、生前にとある作家に骨壷を発注していた。なんでも祖父の時に業者が用意した骨壷が相当気に入らなかったらしく、自分のはもっといい骨壷にしたいと強く希望していたらしい。器とかが大好きだったから、自分が使う最後のモノにはやはりこだわりたかったのだろう。癌が発覚するずっと前から言っていたそうで、それがこんなに早くに実現してしまうとは、なんだか不思議なものだ。
頼んでいた骨壷は、葬儀にはギリギリで間に合わなかった。そもそも骨壷の持ち込みというのはできなくて、どちらにせよ四十九日に納骨する前に、父が発注した骨壷に移し替える必要が出てくる。今日はその移し替えの儀であった。お寺に頼んで、正式な法要ではないので集まれる親族だけ集まって、イケてる骨壷に移し替えた。
世界に2つとない、素晴らしい焼き物の骨壷。父上もさぞや満足していることだろう。