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花鳥の美

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雨雲どっかいけと念じながらアメッシュに張り付き、終業後すぐに自転車で日比谷に向かう。出光美術館で開催中の「花鳥の美 ― 珠玉の日本・東洋美術」展に行ってきた。せっかく急いで出てきたのにチケットを持っていた母上が大幅に遅れ、時間ギリギリで入館。時間がなさすぎてざーっと見て回るかんじになってしまった。

花鳥画だけでなく、花鳥を意匠とした工芸品も多岐にわたって集められており、なかなか見応えのある展示だった。中でもやはり屏風に目がいく。四季花鳥図屏風の前にずっと座って食い入るように観ていた青年が印象的だった。あのスケールには圧倒される。あと金銅蓮唐草文透彫経箱ってのが細工が緻密ですごかった。

人も少なくて静かで、来ている人はほんとに好きな人ばかりなかんじで、ああこれが美術館の雰囲気だよなぁ、なんておもった。出光美術館のロビーからは皇居が見渡せる。空は曇って日没間際なこともありどんより重たいかんじだったけど、なんかいい雰囲気だった。時間あるときに来て外眺めながらのんびりお茶でもしたいな。

手塚治虫のブッダ展

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東京国立博物館で開催中の手塚治虫のブッダ展に行ってきた。漫画と仏像のコラボレーション、うーん、どうなんだ? とおもうおけど、でも天下の手塚治虫のブッダだし、これは観ておきたい。

ブッダの誕生から涅槃までの生涯を、手塚治虫のブッダの原画と実際の仏像とで追って行くんだけど、手塚治虫の原画がすごくうまく使われていてものすごくわかりやすい。ただ漫画のシーンと仏像を並べてるだけじゃなくて、ブッダの生涯を理解した上で仏像を観られるようにしてる。ブッダのことぜんぜん知らない人とか子供とかでもとっつきやすそう。

それにそういえば手塚治虫の原画ってナマで観たのはじめてかも。ペンの動きひとつひとつに漫画家の息が感じられてすごくドキドキするわー。仏像の方もけっこう充実していて、展示の点数は多くないんだけどすごく楽しめた。

ブッダ再読したくなった。実家行ってくるか。

香り かぐわしき名宝展

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藝大美術館で開催中の香り かぐわしき名宝展に行ってきた。「香りの日本文化」「香道と香りの道具」「絵画の香り」という3つのセクションから「香り」というテーマにアプローチする展覧会。”香りを見る” なんて、なかなか興味深い。

香道というのは知らなかったんだけど、一定の作法のもとに香木を炷いて立ち上る香りを鑑賞するものだそうだ。香を「聞く」と表現するのがなんかいいなあ。そのお道具もとても素敵。昔の貴族はこんなので遊んでいたのね。少し前に家紋の本かなんかを読んだときに源氏香の図がでてきたんだけど、それがまさに展示されてておおっ、とおもった。あのパターンはなんかすごいとおもう。

絵画も、「香り」までも感じさせる作品、てことで、うん、たしかに。草木の匂いから、美しい女性の色香まで。なかなかに雰囲気のあるものだ。さらにはさきほどの源氏香の図が作中に描かれていたりして、当時それが流行っていたというのがうかがえておもしろかった。

レンブラント 光の探求/闇の誘惑

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国立西洋美術館で開催中のレンブラント 光の探求/闇の誘惑展に行ってきた。

レンブラントは「光と影の巨匠」と言われるほどに、光の探求や陰影表現がこの画家にとって重要なテーマ。今回の展示ではおもに版画を扱っている。黒の諧調表現が実に豊かで、それによって描かれる陰影が印象的。また、レンブラントは版画に和紙を好んで使ったそうだ。その他にもオートミール紙や中国紙、西洋紙と、それぞれ違った質感をもっていて観ていておもしろい。淡い色がついた紙によって、微妙な諧調を表現したのだそうだ。さらに、銅板の原版もあったりして、これはもういろんな角度からまじまじと観てしまった。スゴい。銅の色がまたきれいで。版画がメインで絵画は数少なかったけど、「アトリエの画家」よかったな。室内のイーゼルの存在感が尋常じゃなかった。小品だけど傑作。

普段は金曜の夜間開館で行くんだけど、節電で美術館の開館時間が短くなっているためやむなく週末に出かけた。でもそこまで混雑してなくてよかった。上野公園の桜は満開。雨が降っていたので人も少なめだったけど、その雨もすっかりやんだ。

タイポグラフィ展

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予定されていたお達者クラブの集いが流れてしまったので、ちんまり隊の片割れを誘って先週行けなかった庭園美術館へ。20世紀のポスター[タイポグラフィー] – デザインのちから・文字のちからである。

タイポグラフィに焦点を当て、時代の流れとともに変遷していく20世紀を代表するポスターを集めた展示。わたしはタイポグラフィ、ことミニマルなデザインが好き。もう80年も前のデザインが、今みてもクールなんだからすごいなあと。演奏会のポスターなんかもあって、今クラシックの演奏会なんかにいくと大量にもらうビラ、どれも同じようなのが多いけど、こんなシンプルなのだったら逆に目立つし、イマジネーションかきたてていいんじゃないの、なんておもったり。文字は情報を伝えるとともに、見た目の印象を左右する大きなデザイン要素であることを改めて認識した。

展示を観た後は庭園をちょろっと散策して、ゆっくりお茶して帰ってきた。帰りの山手線はいつもどおり3分おきにやってきて、乗ってみるとずいぶん空いているように感じた。休みの日はこんなもんなのかな。何にしろ、普通に過ごせることがありがたいなあとおもった。いい気分転換になった休日。

一輌一会

中学時代の友人のお父上が写真展をするというので、久しぶりに地元の友人達と会うがてらにお邪魔してきた。写真は鉄道写真で、一両編成の車輛や貨物列車を集めている。まあ、鉄道マニアなわけだ。

只見線、小湊鉄道、わたらせ渓谷鉄道、銚子電鉄などなど、レトロな電車がいっぱい。米坂線なんかは雪景色に赤い車輌が映えてすごくきれいだった。小湊鉄道はわたしも乗りにいったけど、他のも乗ってみたくなった。雪景色っていったら、飯田線も乗りにいきたいなぁ。雪はいいよなぁ。

写真そのものは別段特徴のあるものではないんだけど、この写真展は、自身の還暦の記念にと催されている、というところがポイントである。これまでの人生の撮り鉄の蓄積を、還暦という節目で回顧するのだ。素晴らしいじゃございませんか。わたしが60歳になったとき、こうやって発表できる何か(もちろん、写真に限らず)があるといいなぁ、とぼんやりとおもった。

山口晃展 東京旅ノ介

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ちょいと銀座に用事があったので、ついでに銀座三越で開催されている 山口晃展 東京旅ノ介へ行ってきた。今回の新作では、何気ない狭い路地だとか、路面電車のような小形電車だとか、水のある風景だとか、そんな下町の風情が感じられる。その発想はなんというか、すさまじくクオリティの高い小学生のラクガキみたいな、そんなファンタジックな印象すら与える。とおもったら、本人が自分で「41才児」と書いていた(笑)。

代表作も充実。時空を超えて事象が絡みあうあの緻密な画面の中には、ちいさな物語が無数に詰まっていて、ひとつひとつじっくり見たいから時間がいくらあっても足りない。見慣れた東京の風景がものすごくわくわくする世界になっている。

グッズもたくさん。東京タワーがとってもかわいくて、ポストカードを3枚も買ってしまった。いつ使おうか、楽しみ。あと前から欲しかった馬バイクのTシャツがあったんだけど、色が白地にピンクしなかくて、紺地に白は他の図柄。あああ、馬バイクが紺地に白だったらよかったのにぃぃぃいいい! ものすごく迷ったけど、買わなかった。いつか紺地に白の馬バイクTシャツにもう一度めぐり会えますように。

江本典隆写真展 “r”

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昭和初期に建てられたというクラシカルなビルの3階。エントランスを入り、古くからの佇まいを感じさせる階段をのぼる。美術関連の洋書があつめられた古書店、そのギャラリースペースで、彼の初の個展は催されている。

雨は、わたしも好きな被写体のひとつだ。雨の日の泣いているみたいな空気が好きなのだ。だけど彼の撮る夜の雨は、ビニール傘越しの街の光が反射してキラキラと美しい。パッと見てクールでかっこいい画面、だけど無数の雨粒の中に映り込んだちいさな反転された世界は、なんだかポップでかわいい。一貫したテーマがあって、だけどいろんな表情がみてとれる、素敵な展示だった。

帰路、雨がぱらぱらと落ちてきた。なんだか楽しい気分になった。

雨が夜の街の光を乱反射しながら路上に降りそそぎ、日常のあらゆるものを洗い流すさまが、とても美しいと思う。

江本典隆写真展 “r”(アール)- 森岡書店

円山応挙展

三井記念美術館で開催中の円山応挙展に行ってきた。ぼんやりしているうちにいつの間にか会期が明日までに迫っていた。

まずは応挙が若い時に描いたという眼鏡絵というものが続けて展示されている。眼鏡絵というのは遠近法で描かれた風景画で、レンズを備えた「のぞき眼鏡」を通して見ると立体的に見えるそうだ。金閣寺や天橋立、清水の舞台など、有名な場所がたくさん描かれていて、当時はこんなんだったんだなという見方でも楽しめた。でもできることなら「のぞき眼鏡」でのぞいてみたかった。

それから襖絵と屏風絵。もうこの展示室はすごい見応え。いきなり波濤図に圧倒される。12幅にわたる水飛沫の描写は見ているだけで気持ちが高揚してくるほどだ。藤花図屏風も見事。捻じ曲がった枝ぶりに、端正な藤の花が美しい。そして雨竹風竹図屏風。雨に濡れる竹と風に揺れる竹の対比。美しすぎる・・・。応挙の描く竹はシンプルなのにすごく存在感があって、好きだ。竹の濃淡で表される奥行き感もたまらない。雪梅図襖は展示替えで見られなかった。これは残念。

淀川両岸図巻の部屋は、もちろんそれもすごいんだけど、それよりもわたしの心を捕らえて離さないのが竹雀図小襖。これすんごいかわいい。てかもうこれ欲しい。竹と雀の襖絵なんだけど、小さい襖なのも雀とよく合ってる。ホントかわいい。小鳥好きのあの人にも見せてあげたいくらいだ。

そして最後に応挙二大最高傑作 ー 松の競演との謳い文句とともに、松に孔雀図襖そして雪松図屏風。雪松図は迫央構図の完成形だとか。描写もさることながら、その空間の使い方は絵画に奥行きと広がりを与える。

まあそんなところで、点数は少なめだけどなかなか見応えのある展示だった。ところで iPhone でメモとってたら怒られる怒られる。iPhone ってそうか携帯電話なのか・・・むぅ・・・。

関重一郎パステル画展

R0011040時折ふと、彼の描く絵のやわらかなタッチを思い出す。そしてブラウザの検索窓にその名前を打ち込んでみる。

関先生は、中学の時の美術の先生だった。直接授業を受けたことはなくて、美術室の掃除の時間に関わっただけ。そんな短い時間でも、たまらなく惹かれるその人柄。佇まいからして超絶な癒しのオーラを放っている、素敵な人だ。

彼の個展が開かれるのを知り、新宿のギャラリー絵夢に向かった。会場に入ると、昔と変わらぬ姿でそこに先生はいた。現在は教員を辞めて個人でパステル画の教室をひらいているそうで、他にも生徒さんらしきお客さんが数人来ている。わたしは数年前にも足を運んでいたのだが、それでもかなり久しぶりなのでもう先生はわたしのことは覚えていないだろうとおもい、声はかけずに展示を見ていた。変わらないやわらかなタッチとやさしくあたたかな色彩は、なんだか安心する。

半分くらい回ったところで、名前を呼ばれた。覚えててくれたのか! と、内心かなり驚喜した。まあ芳名帳に名前を書いていたので、それをみて思い出してくれたのかもしれないけど、それでも嬉しい。しばし話し込む。「俺は四中が本当に好きだった。四中から離れたら、教師は続けられなかった」と仰っていたのが印象的だった。そして先生はまた別のお客さんのところへ。わたしはふたたび展示を見て回る。

しばらくすると、先生は画板を持ってやってきた。生徒さんらしき若いご夫婦がいて、奥さんのほうは赤ちゃんを抱いている。どうやらこれから赤ちゃんの絵を描くようだ。これはいいところに居合わせた。淡いパステルの色を重ね合わせて、赤ちゃんのやわらかな肌や髪の毛の質感が紙に落とされていく。モデルをとらえる目はまっすぐで、紙の上を行き来する手の動きに迷いはない。絵を描く姿は美しい。

なかなかじっとしてくれない赤ちゃんに苦戦しつつ、ものの十数分で描き上げた。先生の絵は風景画が圧倒的に多いけど、そういえば中学のときも生徒をつかまえて人物画を描いていたっけ。美術準備室におかれた描きかけの誰かの絵を見ては、わたしも描いてほしいなぁと密かにおもったものだ。もちろん美術室の掃除当番で話すだけだったわたしは、そんなお願いをすることはできなかったけど。

いいもん見たなぁ、とおもいつつ、退散する前にもういちど先生に挨拶。「稼ぎがよくなったら先生の絵を買いたいです」って言ったら、「稼ぎがよくなったらでいいからな。こんどお前も描いてやるから」と。すごい嬉しかった。ほんとに描いてもらえるかはわからないけど、いつか描いてもらえたらいいなぁ。できることなら、わたしがシワシワのバアサンになる前に。

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