読書」カテゴリーアーカイブ

置かれた場所で咲きなさい

置かれた場所で咲きなさい母上が読んでたいそう心に響いたそうで、貸してくれた。渡辺和子「置かれた場所で咲きなさい」。30代にして大学の学長職に就任し、様々な困難を乗り越えてきた著者がどのように生きてきたのか。また著者は敬虔なクリスチャンなので、神や愛でも人生が語られる。

この手の自己啓発本って、突き詰めるとみんな言ってることは似たり寄ったりで、ああうん、そうだよね。そのとおりだよね。ってなるw これもまたそうで、結局は自分が変わらなければ周りは変わらないってことで、それはそうだなってわかるし、自分の行動を改めないとなってのも大いにおもうし、おもうんだけど、なかなか実行に移せないし、移してもそれを持続させるのってほうとうに、いやほんとうに大変。それができたら、自分を変えられるんだろうなぁ。まあ、少しずつ、小さなことから、できることからやっていくしかないよな。と、いつもおもうことを同じようにおもって終わった。

ただ、この本の内容が心に響いて、いまがんばってる母上は、かなり精神的に参ってるんじゃないかなぁとおもう。父上が死んで、会社の経営者という立場に立たされて。あの歳で、ものすごく重いものを背負わせてしまったんだと思うと、すごく心が痛くなる。わたしにできることって、何だろう。

風が強く吹いている

風が強く吹いているお正月といえば、こたつにみかんに箱根駅伝である。お雑煮とおせちをつついて、箱根駅伝見て、こたつで寝る。ああこれぞ正月。毎年いろんなドラマが繰り広げられ、また母校は箱根常連校なので否が応でも盛り上がる。そんな、箱根駅伝を舞台にした小説なんかあったのね。てことで、三浦しをん「風が強く吹いている」。そういや今年の箱根はすごい強風だった。

素人の寄せ集め集団が箱根を目指す。読んでて恥ずかしくなってくるくらい、ベッタベタなかんじの青春小説。少々(いやかなり?)無理めな設定もあるし、これ箱根駅伝の話じゃなかったらただのスポ根小説としか見てなかったかもしれないけど(笑)、でも箱根駅伝なもんだから、必要以上に感情移入してしまう。ホントに箱根駅伝のドラマを見ているようだった。ていうか、大ブレーキとか、熾烈なシード権争いとか、ドラマみたいだけど実際にあるからね、箱根で。涙の棄権とか、もう見えてるのに繰り上げスタート襷つなげなかった、とかさ。この小説は確かに「夢物語」だけど、やっぱり胸が熱くなる。「走る」という行為の美しさを感じた。

わたし、歩くんなら 10km でも 20km でも歩けるけど、走るとなると 1km でもう足が動かない。でも、走ってみたくなった。ジョギングはじめてみよっかな。

天ぷらにソースをかけますか?

天ぷらにソースをかけますか?―ニッポン食文化の境界線先日お赤飯を炊いたらば、ころすけが「ウチのお赤飯は甘納豆が入ってた」と宣う。ハァ!?!? 何を言っているのこの人は!?!? 一緒に暮らすようになってからというもの、食文化の違いにカルチャーショックを受けること数知れずだったが(彼自身は横浜生まれの横浜育ちだがトーチャンとカーチャンは北海道出身)、ここにきて真打といったところだろうか。

で、Google 先生に聞いてみたところ、どうやら甘納豆お赤飯てのは、北海道ではメジャーらしい。食紅でごはんに色を付けて、甘納豆を混ぜるんだとか。なんだそれ。食紅てアンタ、何もそんなムリヤリ赤くせんでも。てかもはやお赤飯じゃなくね? ごはんが甘いとか気色悪い。まじ勘弁。

とかなんとか調べているうちにぶちあたったのがこの本。野瀬泰申「天ぷらにソースをかけますか? ―ニッポン食文化の境界線」。ああもうわたしこういうの大好き! 天ぷらにソース、甘納豆お赤飯、お味噌のことなどなど、「食の方言」てんこもり。そして極めつけは最終章の「東海道における食文化の境界」。横浜を中心とするサンマーメン、静岡のイルカ食、うなぎの蒲焼の関東風・関西風などの境界を足で歩いて特定していく。わたしも「柏餅のみそあん境界線探しの旅」に出ようとおもったことがあったわけだけど、改めて来年の目標にしようかなw

スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ Iジョブズ本。なぜにこのタイミングかというと、父上が買って積んであった(たぶん、未読w)ものをまず弟が読み、わたしに回ってきたとまあこういうわけ。

わたしはアップル製品がとても好きだけど、ジョブズその人(がどんな生まれでどんな性格でどんな生き方をしたのか)にはあんまり興味が無い(んだね、って言われた。そもそも他人に興味ないよね、とも)ようなんだけど、でもそのアップル製品は、ジョブズの魂がこもりにこもった結晶みたいなものだから、やっぱりジョブズという人を知るのは真だろう。

この本を読むと、ジョブズって、ほんとうにヒドい人だったんだなとw わたしゃこんな人と付き合いたくないよ・・・っていう。上司なんかにしようもんなら、ストレスで胃に穴がいくつあいても足りないんじゃなかろうか。でも、それでもなお人を惹きつける、やっぱり天才であり、カリスマだったんだなぁとおもった。

癌のくだりは、どうしても父上と重ねてしまう。あと、食事法って半分宗教じみてるよな、とかおもう。信じる信じないは人それぞれだし、体質とか生活スタイルに合うかとかも人それぞれなんだろうけど。何にしても、極端な食事がよくないのは明らかで、何事もバランスが大事だわな。と改めておもうなどした。

ジョブズの伝記であるということは、同時にアップルの歴史を辿ることにも近いので、20年来の Mac ユーザとしては、読んでいていろいろと感慨深いものがあった。なんかすごいな。本当に。

タイポさんぽ

タイポさんぽ: 路上の文字観察よそのブログで見てお買い上げ、藤本健太郎「タイポさんぽ:路上の文字観察」。既存のフォントで埋め尽くされゆく都市空間のなかで、ひときわ輝く独特の味わいをもつ文字たち。著者の長年にわたる路上ウォッチングによって集められたそのオリジナリティにあふれた文字を、ものすごく丁寧に、どこがどう素敵なのかを愛情深く語る。

蔵前あたりは昔からのものが多く残っているので、この本に出てくるような味わい深い文字なんかにもわりとよく遭遇する。そんなとき、その文字のどこがどんなふうに見る者の心を捉えるのか、ちょっと立ち止まって考えたりするのも楽しいものだ。そしてそんな不思議な魅力をもった文字たちが、いつまでもそこにあってくれることを願ってやまない。

パリ左岸のピアノ工房

パリ左岸のピアノ工房よそのブログで見て即購入したところの T.E. カーハート「パリ左岸のピアノ工房」。はじめこれはフィクションだろうとおもって読み始めたんだけど、どうもノンフィクション・エッセイのようである。だけど、そこはかとなくファンタジックな雰囲気が漂う。

パリに住むアメリカ人の著者が、自宅近くのピアノ工房に出入りするようになり、ピアノと音楽のある暮らしを楽しむ様を描いている。スタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、エラール、プレイエル、ファツィオーリ。たくさんの素敵なピアノたちと出会い、ピアノと音楽を愛する人たちと出会い、ピアノにまつわる職人の仕事、楽曲や作曲家、ピアノの構造、音楽教育など、いろんなエピソードが紡ぎ出される。著者は昔ピアノを習っていて、また始めたいとおもっているところから始まるので、共感する部分がすごく大きかった。

パリの片隅にあるというこの工房に訪れてみたくなる(著者は「モデルを探そうとはしないでいただきたい」と言っているのだけど笑)。そしてまた、ピアノを弾きたくなる。ピアノと音楽への愛にあふれた、とても素敵な1冊。

ピアニストの脳を科学する

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム弟が読んでいて面白そうだったので、古屋晋一「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」。自身もピアノを弾く著者が、ピアニストの超絶技巧と記憶力を支える脳のメカニズムを脳科学・身体運動学から明らかにする。

いやこれは実に興味深い。わたし自身ピアノを弾くけれど、よく指があんだけ動くなとか、楽譜も覚えようと思って覚えてるわけじゃないけど覚えちゃうわけで、なんとなく不思議には思っていたし、実際ピアノを弾かない人には「すごい」と言われるものだ。音楽を科学するなんてナンセンス、という向きもあるかもしれないけれど、ひとつのアプローチとしてすごく面白いとおもう。人間の身体ってすごいなぁ。まあ、この本を読んだところで今さら超絶技巧を体得することができるわけではないんだけど(笑)。しかし、日々の練習は大事であることは明白。せっかく幼少期からやってきたわけだし、またきちんと練習再開したいなぁ。いや、しよう。まずは、ピアノのイスを定位置に戻すことからw

庭にくる鳥

庭にくる鳥読んでいた他の本に出てきて買った、朝永振一郎「庭にくる鳥」。エッセイ集なんだけど、ノーベル物理学賞を受賞している著者の視点がユーモラスでおもしろい。

この中の「ねこ」は、引っ越しをしたところ飼っていた猫が新居になじめず、行方不明になったり石炭箱の中で真っ黒によごれて丸くなっていたり、という珍事を綴っている。わたしはネコ助さんのことを思い出したが、朝永氏の息子が MIT に留学しているとき、慣れない海外生活と猛烈なスピードで進む授業に参りかけていたところに父から送られてきた「暮しの手帖」に掲載されていたのがこの随筆だったという。「猫よ頑張れ」という父の言葉は、息子にあてた激励であったのだ。

雨のことば辞典

雨のことば辞典少し前に友人が tweet してて、こりゃー6月の1冊に決まりだなーとおもって買って積んでおいた、倉嶋厚「雨のことば辞典」。雨に関することばばかりを集めたユニークな辞典。雨のことば、こんなにたくさんあるのかとちょっと驚き。方言や知らないことばもたくさんあってかなり楽しめた。日本語っておもしろいな。
本文からひとつ抜粋しておきましょうかね。

猫毛雨

梅雨の雨は麦を作っている農家の人には嫌われるが、その雨をいう福岡地方のことば。(中略)猫毛は和毛の転訛か。柔らかい繊毛のような雨がしとしと降り続く天候を嫌って、このようなことばが生まれたのであろうか。

白夜行

白夜行そういや東野圭吾って読んだことないなあ読んでみるか。とおもって買っておいたのに、なぜか宮部みゆきに流れてしまったので、改めて東野圭吾「白夜行」である。

ああ、売れっ子なのわかるなーってかんじのエンターテイメント小説。ちょう長いけど、ぐいぐい読ませる。主人公二人の心理描写がなくて、何を考えてるのかまったくわからないところが不気味さを増している。最終章のぐぐっと真相に迫っていくところは引きこまれた。70年代からの時代背景の描写もおもしろい。わたしより10歳くらい年上の人だったらそのへんもっと楽しめそう。
文庫なのにとにかく分厚くて持ちにくいから、上下巻か3分割くらいでもよかったんじゃないかとw ま、とりあえず幻夜も積んであるので読みますかね。