蝉しぐれ

蝉しぐれどうせなら8月くらいに読めば季節的にいいかんじの今月の1冊になったんだろうけど、まあそんなこたどうでもいいか。というわけで、藤沢周平「蝉しぐれ」。父親が謀反の罪を着せられ刑死し、忍苦の日々を過ごすことになる文四郎。幼なじみのふくとの淡い恋や、逸平・与之助との友情を交えながら成長し、やがて藩の権力闘争に巻き込まれそれに立ち向かっていく。

藤沢周平は読んだことがなかったんだけど、端正な文章に完成度の高いストーリーで読ませるなぁとおもった。淡々としているながらも情景描写は豊かで美しく、その穏やかな雰囲気がすごくいい。江戸時代を舞台にしているので懐かしいというのも変かもしれないけど、なんかそんな印象を受けた。

苦難を浴びることになりながらも悲壮感が漂うわけでもなく、しっかりと前を向いて努力をする文四郎の姿は実に爽快。決してずば抜けた超人みたいなわけではないのに、昔の男子というのはこんなにも潔くて男らしくて凛々しいのかと。親友である逸平や与之助との篤い友情にも心打たれる。いい小説だった。

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