関重一郎パステル画展

R0011040時折ふと、彼の描く絵のやわらかなタッチを思い出す。そしてブラウザの検索窓にその名前を打ち込んでみる。

関先生は、中学の時の美術の先生だった。直接授業を受けたことはなくて、美術室の掃除の時間に関わっただけ。そんな短い時間でも、たまらなく惹かれるその人柄。佇まいからして超絶な癒しのオーラを放っている、素敵な人だ。

彼の個展が開かれるのを知り、新宿のギャラリー絵夢に向かった。会場に入ると、昔と変わらぬ姿でそこに先生はいた。現在は教員を辞めて個人でパステル画の教室をひらいているそうで、他にも生徒さんらしきお客さんが数人来ている。わたしは数年前にも足を運んでいたのだが、それでもかなり久しぶりなのでもう先生はわたしのことは覚えていないだろうとおもい、声はかけずに展示を見ていた。変わらないやわらかなタッチとやさしくあたたかな色彩は、なんだか安心する。

半分くらい回ったところで、名前を呼ばれた。覚えててくれたのか! と、内心かなり驚喜した。まあ芳名帳に名前を書いていたので、それをみて思い出してくれたのかもしれないけど、それでも嬉しい。しばし話し込む。「俺は四中が本当に好きだった。四中から離れたら、教師は続けられなかった」と仰っていたのが印象的だった。そして先生はまた別のお客さんのところへ。わたしはふたたび展示を見て回る。

しばらくすると、先生は画板を持ってやってきた。生徒さんらしき若いご夫婦がいて、奥さんのほうは赤ちゃんを抱いている。どうやらこれから赤ちゃんの絵を描くようだ。これはいいところに居合わせた。淡いパステルの色を重ね合わせて、赤ちゃんのやわらかな肌や髪の毛の質感が紙に落とされていく。モデルをとらえる目はまっすぐで、紙の上を行き来する手の動きに迷いはない。絵を描く姿は美しい。

なかなかじっとしてくれない赤ちゃんに苦戦しつつ、ものの十数分で描き上げた。先生の絵は風景画が圧倒的に多いけど、そういえば中学のときも生徒をつかまえて人物画を描いていたっけ。美術準備室におかれた描きかけの誰かの絵を見ては、わたしも描いてほしいなぁと密かにおもったものだ。もちろん美術室の掃除当番で話すだけだったわたしは、そんなお願いをすることはできなかったけど。

いいもん見たなぁ、とおもいつつ、退散する前にもういちど先生に挨拶。「稼ぎがよくなったら先生の絵を買いたいです」って言ったら、「稼ぎがよくなったらでいいからな。こんどお前も描いてやるから」と。すごい嬉しかった。ほんとに描いてもらえるかはわからないけど、いつか描いてもらえたらいいなぁ。できることなら、わたしがシワシワのバアサンになる前に。

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3 thoughts on “関重一郎パステル画展

  1. by klavierchen at

    読んでいて心が温かくなったよ。ありがとう。
    そんなここ現在-3℃ orz

    返信
  2. by fujifuji at

    私も四中の時に関先生に美術を教わっていました。
    すてきな先生でしたね。
    美術室の裏にとっても大きな花畑の絵を製作されていて、
    「見ていっていいよ」と言ってくださり、かなり長いあいだ先生が絵を描いているのをじっと見ていた記憶がよみがえってきました。いつか個展に行きたいです。

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